電通「鬼十則」読後感

電通鬼十則」(PHP文庫)を読みまして、

なかなか気迫ある文章で面白かったです。

▽読もうと思ったきっかけ
まず私は、ITエンジニアであって、別に広告業界の人間でもないし、体育会系のゴリゴリ営業マンでもベンチャー社長でもない。

ただ当てもなくyoutube財務省関連の陰謀論をザッピングしていたところに、
ホリエモンと立花孝志による、財務省とか既得権益者に関する切り抜きが流れてきて、
その中に電通の苛烈な働き方の話が出てきたので興味を持ったにすぎない。

▽所感

・まず鬼十則の内容が強烈でギラギラ。
5つ目の「取り組んだら『放すな』 殺されても放すな 目的完遂までは」
なんていう物騒なワードは、令和には目に入らない。

陽明学に準えている

元々の鬼十則は、果たして陽明学のエッセンスを含んでいたのかは定かでないが、
知行合一吉田松陰宇宙の摂理などと絡めて鬼十則を捉えている。
確かに、陽明学を学んで体現している人はみんな目がバッキバキなイメージがあるので、昭和の時代とフィットするかも。
というか、やはり革命の人は共通の考えと目つきを持つのかも知れない。

・2001年時点の問題と、2024年の問題は類似している。

現在、2024年も暮れだが、ポリコレ然り反ルッキズム然り、宇宙や自然の摂理に明らかに反している思想が、世間に跋扈している。
2001年に執筆された本書も、世間にいわゆる「馬鹿」が溢れていて、やれ放送禁止用語だのと行きすぎた八方美人に警鐘を鳴らしている。
20年以上も前だが、同じような状況だったんだなぁと。
つまり、この時点では失われた10年でしかなかったものが、ずるずるとさらに20年続いてしまって、失われた30年になってしまったということ。
もはや誰もこの下り坂に違和感を覚えなくなって、いよいよ日本沈没が加速しているように思われた。

・志が肝要
本書では、戦略的思考だの、スピードだの、単純化による革新の発見が大事だのと言っているが、究極はやはり陽明学的な志が肝要であるとのところに行き着く。
これは個人的によくわかる感じがしていて、つまり、前者の3つ(本書内では3S: Strategy, Speed, Simpleと称されてやや重要視されている)がある種教科書的に獲得可能であって令和にも十分普及しそうなのに対して、
後者の志は、昭和的で時代遅れだのと言われ、大変普及しづらくなっている。
しかしやはり自然や宇宙の摂理、と言っては過剰か知らないが、少なくともヒトが人間になって以降に対して、普遍のルールや仕組み、摂理があるように思われる。
陽明学や本書はこの摂理に対する何かヒントを与えている気がする。
多くの哲学書がそうであるように、そのぼんやりしたものは言語化されない。
あくまで、その感覚を持った人間なら、いうまでもなく首肯するような内容が列挙されるばかりで、正しい視点に到達するまでは混乱を極める。

逆に言えば、私個人に足りていないのはその視点であって、
陽明学がすとんと腹落ちするような境地に到達したいものだなぁ、と感じています。